コレクションではなく、ガレージで一人愛でる時間。そういう意味でのガレージライフに憧れる、最近ふとそんなことを思うものです。
もちろん、豪壮なビルトインガレージがあって、居間でくつろぎながら愛車を眺めるも良いし、ガレージが大きくて、そこにコレクションが一堂に会し、それを眺め、それらをちょっとずついじったりできるような、ピットや、整備工場のようなガレージももちろん憧れますが、森の中のきこり小屋がそのまま車庫になっているようなガレージ、最近ちょっといいのではないか。なんて思ったりしています。
CAR MODEL
Lancia Fulvia Sport Zagato 1.2 (Prima Serie)
この香りよ!執拗なほどに暗い、というかあたりが黒くなる夜の森林地帯。エアコンを切って、そんな森のなかを走っていくと、日中の暑さが冷やされ、全体にしっとりとしたあたり一帯が、樹木の香りに満たされる。その芳しい潤いに癒され、それ自体が私をリフレッシュさせてくれることでしょう。
ガレージに着いたら乗ってきたクルマ、扉の前に置き、落ち葉のフカフカな絨毯のうえをちょっとだけ歩いて、ガレージの建物まで歩いていく。
愛車に向かうように置かれたソファに腰を下ろすと「明日は晴れるだろうか。どこまで行こうかね。」なんてぼそっと口をついたりして。テーブルの上には無造作に日記帳が置いてあって、ここからこの愛車と出かけた日々のことを綴ってあるだけ。
世間的にどれだけ価値があるか、そんなことはどうでもいいし、いくらするとかもどうでもいい話。しかし、いつの日も、操る人をたちまち素の自分に戻してくれるような、一番人の温もりに近い自動車。そういうのが収まっていたら素敵だと思うのです。
それが初期の700台だけのアルミボディであるとか、昔から憧れていた小さなV型4気筒エンジンを搭載しているランチアだとか。魂に直接手を入れて揺さぶりをかけてくるようなザガートの仕事云々とかは、せいぜいその日記帳の中で大いに書き記しておけば良いこと。
無名のクルマでもいいというと少し語弊があると思う。しかし自動車趣味はもっと個人的なことでもいいような気がしているのです。仲間はいると楽しいし、共感してくれる人がいたらそれは嬉しいかもしれません。しかし、それが主目的なのでしょうか。そのためにクルマ趣味を始めたわけでも、その車を買ったわけでもないはずです。
突如運命的に現れた愛車との出会い。最初は全くいいとは思わなかったのに、次第に虜になっていった経緯。自分がなんとかしないと悲しい結末しか待っていないのではないかという同情心。それだって立派な自動車趣味だと思うわけです。
Photo: Ryosuke Ogawa
Text: Kentaro Nakagomi
趣味に上手も下手もありません。高級もなければ低級もありません。人の目を気にする必要もありません。自分のペースで楽しい気分で行えることが重要であり、それさえかなえば、十分、立派な趣味といえると思うのです。
「こんなクルマと森に篭りたい。」一眼見た時に最初に感じたのはそんなことでした。
Lancia Fulvia Sport Zagato 1.2 (Prima Serie)
-
メーカー
Lancia
車種 / グレード
Fulvia / Sport Zagato 1.2 (Prima Serie)
年式
1966年
エンジン
1216cc
走行距離
9,744km
ミッション
MT
ハンドル
左
車検有効期限
有効期限切れ
エリア
神奈川県
カスタム / 整備詳細
イタリアからの並行輸入車
202台しか作られていない1.2リッターモデルかつオールアルミボディ
生産17台目の車両